2011/05/12

ADVにおける複数主人公についての考察

 ADVでは主人公が複数いるという作品が多々見られます。これはADVとの相性が非常に高く物語に幅が出やすいからであると考えます。そこで今回はADVでみられる複数主人公をパターン分けしていき、それぞれにどのような強みが存在するのか考察していきたいと思います。

1.非選択・同時進行時間非重複型
HEAVY RAIN(ヘビーレイン) -心の軋むとき-
開発元:Quantic Dream
発売元:SCE
発売日:10/2/18
総監督:
David CAGE
シナリオ:David CAGE




キャラクターのザッピングを強制的に行い、時間の重複をしないパターンです。グランドホテル形式の映画などで最もよく見られるのと同じ形です。複数のシナリオが同時進行しているというよりもひとつのシナリオで視点が変わるといった感じとなります。
複数視点である物の中では最も単独視点の作品に近いものとなりますが、1つの視点からではわからなかった情報がわかるようになったり、普通ならば見れない主人公を外から見ることが可能となり心情の表現に幅が出て、単独主人公に最も近いながらも大きなメリットをもったものだと思います。

2.非選択・同時進行時間重複型
12Riven -the ψcliminal of integral-(通常版)
開発元:サイバーフロント
発売元:サイバーフロント
発売日:08/3/13

原案・脚本:打越鋼太郎
監督:若林健



キャラクターのザッピングを強制的に行い、時間の重複するパターンです。片方の選択肢がもう一方に影響するのが非常に分かりやすく他のパターンと比べるとクリアへの道筋が分かりやすい形となっていると思います。
また直接主人公同士が合わない"12RIVEN"のような作品では、2人の主人公を交互にザッピングさせることによって、互いに同じ場を共有していることを強く意識させるという意味もあるのではないかと個人的には感じます。

3.一回のみ選択・非同時進行時間重複型
ever17 ~the out of infinity~
開発元:KID
発売元:KID
発売日:02/8/29
監督:中澤工
シナリオ:打越鋼太郎
絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-
開発元:アイレム
発売元:アイレム

発売日:06/3/30
ディレクター:Maki D.
プロデューサー:九条一馬

キャラクターのザッピングは行わず、最初にどの主人公でプレイするかを決定するパターンです。シナリオのボリュームを増やすために使われる場合が多いと思いますが、そのほかの部分では同じこのパターンであっても目的とするものが違うことがあります。
"Ever17"では、同じ舞台でありながら主人公によって登場するキャラクターを変えることによって物語の謎を深めるために用いています。ギミックのために複数主人公にしたという要素が強くなっています。
"絶体絶命都市2"では1人の主人公にのみまとめてしまうとその中でのシナリオの幅が広がりすぎてしまい、ストーリーのまとまりが悪くなってしまうためではないかと思います。またそれぞれの主人公に個性を付けることによってゲームとしてのボリュームを増やすという要素もあると考えられます。

4.複数回選択・非同時進行時間重複型
普及版1,500円シリーズ 探偵 神宮寺三郎 未完のルポ 普及版
開発元:データイースト
発売元:データイースト
発売日:
96/11/29
企画原案:西山英一
シナリオ:斉藤竜也



キャラクターのザッピングを複数回選択で行わせ、時間が重複し同じ時間を別の主人公で行うことのないものです。未完のルポ以降の神宮寺三郎シリーズでよく見られるパターンとなっています。
ザッピングは自由になっていますが、今回のパターン1に非常に近い作りとなっており、ボリュームを増やしたものと言えると思います。時間がかぶってしまい見ることのできなかった他主人公の部分は手帳などのコマンドにより確認することで対処されています。
ただ全シナリオを見るにはセーブをうまく使わないと周回プレイが必要となっており、セーブやスキップなどのシステム面で上手くカバーをしなければ非常にめんどくさくなってしまうという短所も存在すると考えます。

5.複数回選択・同時進行時間重複型
街 (サウンドノベル)
開発元:チュンソフト
発売元:チュンソフト
発売日:98/1/22
監督:麻野一哉
シナリオ:長坂秀佳
428 ~封鎖された渋谷で~(特典無し)
開発元:チュンソフト
発売元:セガ

発売日:08/12/4
監督:イシイジロウ
シナリオ:北島行徳

キャラクターのザッピングを複数回行い、時間が重複しないパターンです。個人的にはもっとも複数主人公の強みの出せるパターンであると感じます。
パターン3の"絶対絶命都市2と同じようにシナリオ毎に強い個性をつけることが可能となる他に、"複数の主人公を同時進行させるため、各主人公の中で物語の起伏をつけながらも他の主人公のシナリオが緊張状態にあることによって、ゲーム全体では非常に引き締まった作品にすることが可能なシステムであると思います。
システム面をうまく作らなければセガサターン版街のように難易度が非常に高くなってしまいますが、セガサターン版以外の街や428ではチャートシステムをつけるなどしてあまりつまらずにスピーディーにゲームを進められるようになっています。

総論
やはり1つの物語を自然に多面的に見れるというのが強みとなるのではないでしょうか。1つのものを全く違う演出で見るというのは非常に面白いことだと思うのですが、そのように複数主人公を扱っているのはチュンソフトのみに感じてしまいます。5pb.の"DUNAMIS15"やイエティの"ルートダブル"が複数主人公であるようなので個人的にはこの2作品を中心に期待して待ちたいと思っています。

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