2011/06/05

「ADVのループモノ」についての考察 第1回 "Prismaticallization"の面白さについての考察

2011年1月~3月の間にMBSほかで放映されたTVアニメ"魔法少女まどかマギカ"がADV的ループの構造となっているのではないかとして話題となりました。そこで今回から数回にわたりループを題材とした、もしくはループ的構造を物語に取り入れている作品について考えていきたいと思います。
第1回となる今回は1999年にアークシステムワークスから発売されたPrismaticallizationについて考察してみたいと思います。
Prismaticallization
開発元:アークシステムワークス
発売元:アークシステムワークス
発売日:99/10/28

企画・脚本:池田修一
キャラクターデザイン:森藤卓弥


Prismaticallizationtとは
  1999年にPSで、2000年にDCで発売されたループを題材とした恋愛ADVとなっています。ただし恋愛要素は他の恋愛ADVのなかでもに比べるととても少なく、また独特の文体、独創性に飛んだ非常に個性的なシステムのため一般的には奇作として扱われる場合がほとんどだと思われます。
 アークシステムワークスによれば「多くの非難と僅かな賛辞を呼んだ」とのことであり、この言葉のとおり非常に粗い部分の多い作品でありますが、他の作品にない大きな魅力のある作品でもあります。

システムからの考察
 「状態」を「記録」するかどうかという選択を出し、「記録」をすれば次のループで「開放」を行いその後の展開が少し変わるという独特のシステムとなっています。このシステムにより最短ならば15~20週程度で終わらせられる物もうまくやらなければ100週以上ループをしてもおかしくないという、ループ者を題材とした悪品の中でも周回数の非常に多い作品となっています。

シナリオからの考察
 ループものでは多く見られるループからの脱出をテーマにしています。ただし、物語の展開に影響をあたえるのは前の世界での選択であり、現在の世界ではないため、多くのループものが現在の世界のみで脱出を試みるのに対し、"Prismaticallization"では過去の世界での行動に結びつくというのは他の作品と大きく違う部分ではないかと思います。
  また、"Prismaticallization"では主人公はループを意識していません。他の作品の多くの主人公はループを意識した上で脱出をしようとするため、主人公とプレイヤーが同じ視点となりますが、本作でのプレイヤーは主人公視点というよりもフラグを管理する神様のような視点とも言えるかもしれません。

ADVからの考察
本作ではテキストは主人公目線で語られていますが、選択肢は主人公目線ではなく「状態」を「記録」するかどうかを決める神様のような視点から選ぶことになっています。この主人公視点でありながら、主人公の行動を直接選択しないというゲームシステムを自然に行っているのはこの作品の強みであり、ADVの強みではないかと個人的には感じます。

総論
シナリオ自体はループからの脱出というありがちな内容でありながら、独自のシステムによって他にない個性を持った作品だと思います。たしかに個性の強いシナリオ、場合によっては1周5分もかからないループが何十週も続ける展開により非常に人を選ぶゲームではあると思いますが、人を選ぶというのはそこに強い個性があるということの裏返しであると思います。



以下"Prismaticallizationとは関係の私事について
私の参加しているサークル「Moriyappoi」が、コミックマーケット80に参加します。頒布する作品は"街"のシルエットモードのような画面で展開する都市脱出型ノベルゲーム「The Dead」完全版となっています。近日中にサークルサイトリニューアルや体験版公開などを予定していますので、もし興味を持っていただけたなら、ついでにでもチェックしていただけると幸いです。よろしくお願いします。


Moriyappoi

コミックマーケット80

2日目 8月13日(土) 

東2ホール Vブロック-54 a 


2011/05/24

"Remember11"の面白さについての考察

Remember11 ~the age of infinity~通常版
開発元:KID
発売元:KID
発売日:04/3/18
企画原案・監督:中澤工
シナリオ:打越鋼太郎



Remember11とは
"Never7"、"Ever17"に続くinfinityシリーズ3作目となっています。前2作と同じで中澤工さん監督・打越鋼太郎さんシナリオとなっていますが、過去2作が打越鋼太郎さん企画なのに対し"Remember11"では中澤工さん企画となっています。
シナリオはinfinityシリーズらしくループと 閉鎖空間からの脱出というものが軸となっています。また今作では主人公にも声・立ち絵ともに存在します。

シナリオからの考察
過去の2作品に比べ前半から非常に盛り上がるシナリオとなっていると感じます。Ever17で欠点としてよく挙げられる緊張感がない・前半が退屈という点につきましては、大きく改善されていると思います。BADENDが非常に多く選択肢を1つ間違えるだけで死ぬという展開も少なくありません。物語の盛り上がり方といった点では"Ever17"以上と言えると個人的には感じます。
話の盛り上げ方・謎の残し方といった点ではさすが打越さんといった感じで気になるように配置されています。 ただ、終わり方が非常に独特となっており、この点が"Remember11"最大の欠点と多くの批判を集めてしまっています。

ADVからの考察
"Remember11"では複数視点とマルチエンディングというADV独自の強みを非常にうまく使ったシナリオ構成になっていると思います。特にマルチエンディングという点では"かまいたちの夜"や"Steins;Gate"とは別の意味でうまく使った作品であると思います。
"Remember11"ではBADENDでしかわからないことが非常に多くあり、これにより1週目が最も面白い場合が多いADV作品の中では非常に周回プレイを意識したつくりとなています。また、BADENDといっても死ぬだけっで終わるということはなく、「なぜ死んだのか?」「なぜこのようなものが見つかったのか?」などといった疑問を提案する作りとなっており、周回プレイへ向けてストレスの溜まらない作りとなっていると感じます。
残念な点としましては、BADENDを見なければいけないというゲームデザインでありながら、BADENDを未rのが少々めんどくさい作りとなってしまっていると感じます。"街"や"428"のようなシステム的にやり直しのしやすいシステムやフラグの簡易化をしても良かったのではないかと感じてしまいます。

総論
"マルチエンディング・複数視点というADVのなかでも分かりやすい強みを非常にうまく使った作品でありながら、Ever17"の次の作品、終わり方があまりにも独特という2つの点のため、ああり評価が伸びなかった非常に惜しい作品であると思います。SFサスペンスADVの中ではEver17"や"Steins;Gate"に比べればとても粗い作品であると思いますが、ADVの強みを生かした作品という意味では勝るとも劣らない作品ではないかと感じます。

2011/05/16

ADV的シナリオのRPG「リンダキューブ」についての考察

リンダキューブではシナリオが3つに分かれ(PS・SS版では4つ)に別れており、そのシナリオの作り方がBADENDを見てからのtrueENDに近いものを感じます。そこで今回はリンダキューブについて考察していきたいと思います。

リンダキューブ 【PCエンジン】
開発元:アルファ・システム
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売日:95/10/13
:ゲームデザイン:桝田省治
キャラクターデザイン::カナビス



リンダキューブとは
ネオ・ケニアと呼ばれる地球によく似た惑星を舞台としたサイコスリ ラー&ハンティングRPGとなっています。巨大隕石が落下する8年後までの間にできるだけ多くの動物を雌雄1対につがいとして、方舟に乗せ脱出することを 目的としています。ゲームデザインの桝田省治氏のホームページにあるリンダキューブのページにありますように、
・主人公は勇者ではない
・魔王やそれに類する世界の脅威となる「敵」が存在しない
・惑星の滅亡を阻止する事が出来ない。
などの普通のRPGとは違った特徴を持っています。

あらすじ
地球によく似ている惑星、ネオ・ケニアには8年後回避不能の巨大隕石が降ってくる。それまでにケンは幼なじみのリンダとともに可能なかぎり動物を雌雄一対として、方舟に乗せ脱出しなければならない。

リンダキューブの考察
リンダキューブでは難易度別にシナリオA、シナリオB、シナリオCと分かれています。A・B・Cともに舞台・登場キャラクター・最初の展開はほぼ同じとなっていますが、キャラクターの性格・物語の展開は大きく変わっています。
シナリオA、シナリオBはサイコスリラー&ハンティングRPGの名前のとおり非常にさいこな展開となっておりあまりハッピーエンドといえる展開ではなく、むしろBADENDに近い作りとなっていると思います。各々のシナリオにはそのシナリオのラスボスとも言えるキャラクターに非常に印象に残るセリフを持っています。
シナリオCでは他の2編と違いサイコスリラー的な展開は薄く、全体を通して非常に明るい展開がなされています。またシナリオCのなかでシナリオAやシナリオBでの印象的なセリフを、別の意味で用いることによってプレイヤーにシナリオCのみで与えられる以上の心情変化を与えているのではないかと感じます。
難易度順となっているため多くの人がシナリAから順にやっていくことをうまく利用し、シナリオAを見てのシナリオB、シナリオA・Bを見てのシナリオCという展開はかまいたちの夜のようなBADENDを見てこそのtruENDというADVが最も特異とする形を、うまくRPGに落とし込んだ作品ではないかと個人的には感じます。

総論
"リンダキューブ"はポケモンより先に作られたハンティングゲームという面白さが多くの場面であげられていますが、個人的にはこの複数シナリオを置くことによるADV的つくりのRPGというのものも、面白さに占める割合は大きいのではないかと感じます。
桝田省治氏といえばリメイクもされる"俺の屍を越えてゆけ"や恋愛対戦RPGと言われる"ネクストキング"のように普通のRPGじゃないRPGが有名ですが、そのなかでも個人的には"リンダキューブ"や勇者が死ぬときにどれだけの人が葬式に来るかでエンディングが変わるRPG"勇者死す。"のような作りのマルチシナリオ・マルチエンディング的な作りのRPGをまた見てみたいと感じます。

2011/05/12

ADVにおける複数主人公についての考察

 ADVでは主人公が複数いるという作品が多々見られます。これはADVとの相性が非常に高く物語に幅が出やすいからであると考えます。そこで今回はADVでみられる複数主人公をパターン分けしていき、それぞれにどのような強みが存在するのか考察していきたいと思います。

1.非選択・同時進行時間非重複型
HEAVY RAIN(ヘビーレイン) -心の軋むとき-
開発元:Quantic Dream
発売元:SCE
発売日:10/2/18
総監督:
David CAGE
シナリオ:David CAGE




キャラクターのザッピングを強制的に行い、時間の重複をしないパターンです。グランドホテル形式の映画などで最もよく見られるのと同じ形です。複数のシナリオが同時進行しているというよりもひとつのシナリオで視点が変わるといった感じとなります。
複数視点である物の中では最も単独視点の作品に近いものとなりますが、1つの視点からではわからなかった情報がわかるようになったり、普通ならば見れない主人公を外から見ることが可能となり心情の表現に幅が出て、単独主人公に最も近いながらも大きなメリットをもったものだと思います。

2.非選択・同時進行時間重複型
12Riven -the ψcliminal of integral-(通常版)
開発元:サイバーフロント
発売元:サイバーフロント
発売日:08/3/13

原案・脚本:打越鋼太郎
監督:若林健



キャラクターのザッピングを強制的に行い、時間の重複するパターンです。片方の選択肢がもう一方に影響するのが非常に分かりやすく他のパターンと比べるとクリアへの道筋が分かりやすい形となっていると思います。
また直接主人公同士が合わない"12RIVEN"のような作品では、2人の主人公を交互にザッピングさせることによって、互いに同じ場を共有していることを強く意識させるという意味もあるのではないかと個人的には感じます。

3.一回のみ選択・非同時進行時間重複型
ever17 ~the out of infinity~
開発元:KID
発売元:KID
発売日:02/8/29
監督:中澤工
シナリオ:打越鋼太郎
絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-
開発元:アイレム
発売元:アイレム

発売日:06/3/30
ディレクター:Maki D.
プロデューサー:九条一馬

キャラクターのザッピングは行わず、最初にどの主人公でプレイするかを決定するパターンです。シナリオのボリュームを増やすために使われる場合が多いと思いますが、そのほかの部分では同じこのパターンであっても目的とするものが違うことがあります。
"Ever17"では、同じ舞台でありながら主人公によって登場するキャラクターを変えることによって物語の謎を深めるために用いています。ギミックのために複数主人公にしたという要素が強くなっています。
"絶体絶命都市2"では1人の主人公にのみまとめてしまうとその中でのシナリオの幅が広がりすぎてしまい、ストーリーのまとまりが悪くなってしまうためではないかと思います。またそれぞれの主人公に個性を付けることによってゲームとしてのボリュームを増やすという要素もあると考えられます。

4.複数回選択・非同時進行時間重複型
普及版1,500円シリーズ 探偵 神宮寺三郎 未完のルポ 普及版
開発元:データイースト
発売元:データイースト
発売日:
96/11/29
企画原案:西山英一
シナリオ:斉藤竜也



キャラクターのザッピングを複数回選択で行わせ、時間が重複し同じ時間を別の主人公で行うことのないものです。未完のルポ以降の神宮寺三郎シリーズでよく見られるパターンとなっています。
ザッピングは自由になっていますが、今回のパターン1に非常に近い作りとなっており、ボリュームを増やしたものと言えると思います。時間がかぶってしまい見ることのできなかった他主人公の部分は手帳などのコマンドにより確認することで対処されています。
ただ全シナリオを見るにはセーブをうまく使わないと周回プレイが必要となっており、セーブやスキップなどのシステム面で上手くカバーをしなければ非常にめんどくさくなってしまうという短所も存在すると考えます。

5.複数回選択・同時進行時間重複型
街 (サウンドノベル)
開発元:チュンソフト
発売元:チュンソフト
発売日:98/1/22
監督:麻野一哉
シナリオ:長坂秀佳
428 ~封鎖された渋谷で~(特典無し)
開発元:チュンソフト
発売元:セガ

発売日:08/12/4
監督:イシイジロウ
シナリオ:北島行徳

キャラクターのザッピングを複数回行い、時間が重複しないパターンです。個人的にはもっとも複数主人公の強みの出せるパターンであると感じます。
パターン3の"絶対絶命都市2と同じようにシナリオ毎に強い個性をつけることが可能となる他に、"複数の主人公を同時進行させるため、各主人公の中で物語の起伏をつけながらも他の主人公のシナリオが緊張状態にあることによって、ゲーム全体では非常に引き締まった作品にすることが可能なシステムであると思います。
システム面をうまく作らなければセガサターン版街のように難易度が非常に高くなってしまいますが、セガサターン版以外の街や428ではチャートシステムをつけるなどしてあまりつまらずにスピーディーにゲームを進められるようになっています。

総論
やはり1つの物語を自然に多面的に見れるというのが強みとなるのではないでしょうか。1つのものを全く違う演出で見るというのは非常に面白いことだと思うのですが、そのように複数主人公を扱っているのはチュンソフトのみに感じてしまいます。5pb.の"DUNAMIS15"やイエティの"ルートダブル"が複数主人公であるようなので個人的にはこの2作品を中心に期待して待ちたいと思っています。

2011/05/08

"極限脱出 9時間9人9の扉"の面白さについての考察

極限脱出 9時間9人9の扉とは
ノベルパートと脱出パートの2つのパートによって構成されていています。 ディレクターにinfinityシリーズシナリオの打越鋼太郎さん、プロデューサーに428で総監督を務めたイシイジロウさんと2000年代を代表する ADVを生み出した2人がタッグを組んだサスペンスADVとなっています。またチュンソフトとしては珍しく 生え抜きのスタッフではなく、移籍組である打越さんの企画した作品となっています。

極限脱出 9時間9人9の扉
開発元:チュンソフト
発売元:スパイク
発売日:09/12/10
シナリオ・ディレクター:打越鋼太郎
プロデューサー:イシイジロウ

キャラクターデザイン:西村キヌ





これからきみたちにはゲームをしてもらう
          生死けた運命の…ゲームだ…
あらすじ
 謎の男「ゼロ」により見知らぬ船内に拉致された9人の男女はノナリーゲームという脱出ゲームをさせられることになる。

ノベルパートの考察
伏線や謎の残し方はさすが打越さんといった感じで非常にうまい作品だと思います。BADENDにもしっかり謎を残しているためtrueENDのために2週目、3週目を促すストーリーはマルチエンディングというものをうまく使っていると感じます。
展開は打越鋼太郎さん作品の中では序盤の盛り上げ方と収拾のつけ方のバランスがいいと感じましたので、打越さん作品の入り口としては最も良いのではないかと思います。infinityシリーズや12RIVENを思い出す感じなので、過去の打越さん作品を面白いと感じた人ならばこの作品も面白いと思えるのではないかと思います。逆にinfinityシリーズ・12RIVENが合わなかった方は辛いかもしれません。
残念な点としてはチュンソフト作品に多くあるおまけ・隠し要素的なものが存在しません。またエンディングの数も他のチュンソフトサウンドノベルと比べると少なくなっています。チュンソフトらしいギャグ的なエンドや、他キャラ視点のおまけストーリーあたりがあっても良かったのでは?と感じてしまいます。

脱出パートの考察
難易度はノベルパートの邪魔にならない程度の難易度となっています。もし脱出パートで詰まったとしても何度か挑戦することによってヒントの出るようになっているので、クリアが出来ないということはないと思います。ただ時間制限もなく、脱出パート中にBADENDになるということもないため緊張感が全くありません。せっかくタイトルでも9時間と時間を意識しているのですから、時間制限はあっても良かったのではないかな?と感じてしまいます。
操作性につきましてはタッチパネルと脱出ゲームの非常に相性が良いためか非常にやりやすくなっていると思います。ただ十字キーでも場所移動ができるようになっているため、左利きではやりにくいとまではいかないまでも、右利きに比べると面倒かもしれません。ボタンコンフィグで左利き用に十字キーとボタンの機能を逆に出来ればなお良かったのではと感じます。

その他システムの考察
チュンソフトにしては粗さの目立つシステムであったと思います。まずスキップは押し続けていなければならないため非常にめんどくさいです。また一度クリアした脱出パートでも飛ばすことができないため、周回プレイを意識したゲームデザインとの相性が非常に悪く、ゲームテンポは残念なことになっています。
セーブデータも1つしかつくることができず、チュンソフト作品に多いフローチャートも存在しないため分岐の前からのやり直しもできなくなっています。いつものチュンらしく3つくらいセーブデータ枠を用意されていればよかったかなと思います。

総論
脱出ゲームのタッチパネルとの相性の良さ、シナリオのテンポ・展開は悪く無いと思うので、ある程度の中途半端な感じ・ある程度の超展開を気にしない・許せる方ならば楽しめるのではないかと思います。ただシステム面ではテンポが非常に悪くなっている・セーブ枠が1つしかない等2000年以降のチュンソフト作品の中では最低の出来ではないかと思うぐらいひどいです。
チュンソフトのDSの新規タイトルは"9時間9人9の扉"にしても"ぞんびだいすき" にしてもタッチパネルを非常にうまく使っているように感じたので次のDS・3DSタイトルに期待したいと思います。

2011/05/05

"銃声とダイヤモンド"と"HEAVY RAIN"の選択肢と時間の考察

電撃ゲームスVol.19での特集されていた「2010年の注目ゲーム」の中で"HEAVYRAIN"が「非常に緊張感がある」と多くのクリエイターの支持を集めていました。個人的にはその緊張感を生んだ原因の1つに選択肢に対する時間というものがあるのではないかと思います。そこで今回は同じく選択肢に時間の概念のある"銃声とダイヤモンド"とあわせて考えていきたいと思います。

銃声とダイヤモンド
開発元:ZenerWorks
発売元:SCE
発売日:09/6/18
ディレクター:佐々木真治
シナリオ:コバヤシヒロカズ
 上杉直子
HEAVY RAIN(ヘビーレイン) -心の軋むとき-
HEAVY RAIN
心の軋むとき
開発元:Quantic Dream
発売元:SCE
発売日:10/2/18
総監督:
David CAGE
シナリオ:David CAGE

銃声とダイヤモンドとは
立てこもりや誘拐事件などを交渉人である主人公が解決していくうちにそれぞれの事件に共通点が 現れ、すべての事件がラストへ繋がっていくというサスペンスADV、シナリオ演出・監修を麻野一哉さんが担当しています。交渉パートというリアルタイムで 犯人と交渉していく独特のシステムをとっています。

"銃声とダイヤモンド"と時間の考察
 銃声とダイヤモンド では交渉パートで時間内に選択を行わないと何も言わずに次に進むようになっていました。これによって2つ従来のADVではできなかったことができるようになったのではないかと思います。
1つは従来のADVでしばし見られたどっちの選択肢も納得行かないという場面で、1つの逃げ道ができたというのがあります。AもBも納得行かない、しかしどちらかを選ばなければいけないという場面で黙るという選択肢が生まれたのは非常に大きな事だと感じます。
そしてもう1つは時間に追われることによって焦るということがなかったノベルADVの中で、時間を意識させ焦らせるということが起きるようになったことです。普通に生活していれば必ず迫られる時間を意識させたのは本当に素晴らしいゲームシステムだと思います。ただ個人的には"銃声とダイヤモンド"では考える時間が長すぎたためあまり緊張感が生まれなかったのが残念でした。

HEAVY RAINとは
 連続殺人意見をモチーフとしたサイコ・サスペンスADV、4人の主人公がそれぞれ過酷な状況の中で様々な選択を迫られていく。ドアを開ける、鍵を回すといった簡単な動作から格闘などの素早い判断の迫られる動作まですべての行動を自分でしなければならないという独特な操作と、4人全員が死んでも物語が進んでいくというシステムとなっています。日本ゲーム大賞2010では非常に高い評価を受けゲームデザイナーズ大賞を受賞しました。

"HEAVY RAIN"と時間の考察
"HEAVY RAIN"での独自のシステムはすべての動作を操作する、死んでもそのまま話が続くと書きましたがその2つ、特に前者のすべての動作と操作するというのは時間の概念があってこと意味を成すものだと思います。マンガや映画などの受動的なメディアではできない実際に時間に追われるという事をADVでやることによって、今までにない主人公への感情移入を演出することが出来ているのではないかと感じます。また個人的に"銃声とダイヤモンド"で残念だった考える時間は非常に短く緊張感と焦りの演出としては最も良い時間だったのではないかと思います。
そのまま話が続くというシステムも緊張感を生み出す上で素晴らしいと感じたシステムなのですが、今回は時間についてなのでここでは割愛させていただきます。

総論
個人的には時間という概念はどんな文字よりも緊張感が出せるのではないかと感じるので多くのゲームで採用されないかと思ってしまいます。特に"9時間9人9の扉"のように時間を意識させるゲームでもし時間の考えが別にあればまた違った評価がされたのではないかと感じてしまうだけに残念です。

2011/04/29

ADVにおけるBADENDENDについての考察

 ADV、特にノベルアドベンチャーゲームの強みとしてエンディングを複数用意することが自然にできるというのがあると個人的には思います。そこでエンディングの1つであるBAEENDについて、どのようなものがあるか5つのパターンに分けて考えてみたいと思います。


1.BADENDが存在しない
Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (通常版)
Steins;Gate

開発元:5pb. ニトロプラス
発売元:5pb.
発売日:09/10/15
企画原案:志倉千代丸
シナリオ:林直孝
普及版1,500円シリーズ 探偵 神宮寺三郎 未完のルポ 普及版
探偵 神宮寺三郎
未完のルポ
開発元:データイースト
発売元:データイースト

発売日:96/11/29
ディレクター:西山英一
シナリオ:斉藤竜也

 「Steins;Gate」や「探偵 神宮寺三郎 未完のルポ」のようにBADENDという名前のものは存在しないものです。そのなかでも2種類に分けられると思います。1つは「Steins;Gate」のように、trueEND or キャラクターエンドとなっているモノ、もう1つは「未完のルポ」のようにエンディングが1つしか存在しないものです。
 前者のtrueENDとキャラクターエンドしかないというパターンですが、これらの中には悪い終わり方のものがないというわけではなく、名前こそキャラクターエンドでありながら「Steins;Gate」や「Memories Off」のような実質的にはBADENDのような作品も数多く存在し、パターン2やパターン3の派生といったほうがいいと思われるものもあります。また「Prismaticallization」のようにキャラクターエンドにはいるまで延々とループさせられるという、BADEND以上にBADな展開がまっているような非常に特異なパターンの作品も稀に存在します。
 次に後者のエンディングが1つしかないものですが、こちらは「未完のルポ」以外では「レイトン教授シリーズ」や「ひぐらしのなく頃に」(やってないので確実ではありませんが)などもこれに近いと思われます。エンディングが1つしかないため選択肢があまり意味を持たないため、選択肢がなかったりあこれといって意味がなかったりして一本道だと批判されることがあります。そのため「神宮寺三郎シリーズ」のようにザッピングシステムを取り入れたり、「レイトン教授シリーズ」のように謎解き要素を取り入れることによってストーリーに矛盾の起きないようにゲームのボリュームを増やしている作品が多くみられます。


2.一応存在するがBADENDになる可能性は少ない
ever17 ~the out of infinity~
Ever17
開発元:KID
発売元:KID
発売日:02/8/29
監督:中澤工
シナリオ:打越鋼太郎



「Ever17」のようにBADENDに入る可能性が非常に低く、BADENDがあってないようなものです。BADENDが存在しないものと並んで日常モノのADVに多いイメージを個人的には持つのですが、日常モノのADVはONE・Memories Off・Memories Off2しかやったことないのでこれといって根拠はありません。「Ever17」を見てみるとキャラクターエンドとtrueENDだけで完結しているので、BADENDはどっちつかずの選択ばかりをしていた事に対する天罰的な要素が強いのではないかと感じます。

3.ある程度存在しBADENDになる可能性が高い
かまいたちの夜
かまいたちの夜
開発元:チュンソフト
発売元:チュンソフト
発売日:94/11/25
総監督:中村光一
監督:麻野一哉
脚本:我孫子武丸
銃声とダイヤモンド
銃声とダイヤモンド
開発元:ZenerWorks
発売元:SCE

発売日:09/6/18
ディレクター:佐々木真治
シナリオ:コバヤシヒロカズ

      上杉直子

 「かまいたちの夜」や「銃声とダイヤモンド」のようにクリアするまでにほぼ間違えなくBADENDを踏むようなもののことです。考えれば答えの出てくる推理ものに多く「なぜ間違えたのだろう?」と考えさせ複数回プレイさせることを意識して作られていると感じます。多くの場合選択肢毎にセーブをしていなくても間違えた場所の寸前から再度始められるようなシステムで作られている場合が多いです。
 「12RIVEN」(例に上げた2つほどBADENDに入りやすい訳でもありませんが)のように選択肢毎にセーブをしていないとやり直しの効かないシステムであるにもかかわらず、BADENDに入りやすいためにストレスが溜り易い作品もあり、複数の選択肢が関わり合ったりBADENDに入ってからが長いゲームでは難しいシステムと思われます。

4.数が多いがあまり意味はない
街 (サウンドノベル)

運命の交差点
開発元:チュンソフト
発売元:チュンソフト
発売日:98/1/22
監督:麻野一哉
シナリオ:長坂秀佳
428 ~封鎖された渋谷で~(特典無し)
428
閉鎖された渋谷で
開発元:チュンソフト
発売元:セガ

発売日:08/12/4
監督:イシイジロウ
シナリオ:北島行徳

「街」や「428」のようにBADENDが非常に多いもののことです。こちらもBADENDに入りやすく、その数が膨大であるため選択肢の寸前から再プレイしやすいようなシステムで作られている場合がほとんどです。
「街」や「428」ではBADENDを集めることによって隠しシナリオを解禁したり、一覧表を作ることによって残りの数がわかるようにするなど、BADENDを集めることに意味を持たせモチベーションが保てるよう努力されている場合が多くあります。

5.見ないと話がわからない
Remember11 ~the age of infinity~通常版
Remeber11
開発元:KID
発売元:KID
発売日:04/3/18
監督・企画原案:中澤工
シナリオ:打越鋼太郎



 trueENDを見るだけでは話の全貌が見えず、BADENDを見てやっと話の全貌が見えてくるというパターンです。エンディングを複数見せることのできるADV独特のシステムを存分に活用したものであると個人的には思っているのですが、BADENDの数が多すぎたりフラグがめんどくさかったりすると全部見るのが非常に大変になり匙加減が難しいパターンだと思われます。
 ADVの独特さを最も利用したパターンなので好きなのですが、Remember11しかやった事がありません。そのRemember11もBADENDが非常に多い・複数の視点が互いに影響をあたえるためセーブ・フラグ管理がめんどくさい等システム周りに少々粗さを感じてしまいます。システム的にもう少し親切な設計がされていれば、また違っていればもう1ランク良い評判になったのではないかと思ってしまう個人的には最も惜しいと感じてしまう作品の1つです。

総論 
 当たり前のことですがBADENDに意味を持たせればもたせるほど、BADENDに入る可能性が高くなり、そこでストレスを溜めないための親切なシステムが必要になってくるものだと思われます。そのことを考えるとBADENDの地位の向上のためには素晴らしいシステムの登場が必要不可欠であるのではないかと感じられます。そこで個人的にはシステムが非常に親切であるチュンソフトやZenerWorksあたりが面白いことをしてくれるのではないかと思います。
 また「Steins;Gate」はBADENDという名前のENDこそないものの、キャラクターエンドを見てこそ意味のある作りは、「かまいたちの夜」や「Remember11」を彷彿とさせる作りであるというのは非常に面白い試みであると感じます。そういう点では今夏発売予定の新作ADV「DUNAMIS15」なんかは一つ楽しみな作品となるのではないかと思います。